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東京高等裁判所 昭和49年(ネ)2978号 判決

控訴人

株式会社明治

右代表者

中込薫

右訴訟代理人

古屋福丘

被控訴人

長谷部富士雄

被控訴人

林博文

主文

一、原判決を次の通り変更する。

二、被控訴人等は、控訴人が別紙目録記載の約束手形を被控訴人等に交付するのと引換に、控訴人に対し、各自金五拾萬円及びこれに対する昭和四拾九年五月弐拾八日から支払済に至る迄の百円につき日歩金弐拾銭の割合による金員を支払え。

三、訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人等の負担とする。

四、この判決は、仮に執行することができる。

事実《省略》

理由

控訴人主張の請求原因事実は、被控訴人等において明かに争わないから、これを自白したものとみなすべきである。

而して、手形割引は通常手形の売買であつて、手形割引契約に伴う手形買戻の債務に附帯する遅延損害金の約定には、利息制限法の適用はないものと解されるところ、本件口頭弁論の全趣旨によるも、本件の手形割引が手形の売買ではなく、金銭消費貸借上の債務の支払方法又は担保の趣旨でなされたものと認めるべき資料はなにら存在しないから、本件手形割引契約による手形の買戻に附帯する日歩金二〇銭の遅延損害金の約定が利息制限法の規定により制限されるべきものということはできない。

よつて、本件手形割引契約の買戻約款に基き、控訴人が被控訴人等に本件手形を交付するのと引換に、被控訴人等に対し、手形金相当額金五〇万円及びこれに対する右手形の満期日の翌日である昭和四九年五月二八日から支払済に至る迄の一〇〇円につき日歩金二〇銭の割合による遅延損害金の支払を求める控訴人の請求は、全部正当であつてこれを認容すべきものであり、右遅延損害金の請求につき、利息制限法を適用して年三割六分の限度においてのみこれを認容し、その余を棄却した原判決は、右棄却部分につき不当であるから、民事訴訟法第三八六条の規定により原判決を変更して控訴人の請求を全部認容することとし、訴訟費用の負担につき同法第九六条、第八九条及び第九三条第一項本文の規定を、仮執行の宣言につき同法第一九六条の規定を各適用し、主文の通り判決する。

(平賀健太 輪湖公寛 後藤文彦)

別紙 手形目録《省略》

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